精読シリーズ第4回。今回は、実際の英字新聞の記事に出てきた文を使って、私の精読の様子を実況中継したいと思います。
第2回で書かせていただいた「読む上で最も重要な作業」=「述語動詞を見つける」を、実際にどのように行っているか御覧下さい。
また、第3回の「精読をする上で優先的に取り組みたい文法事項」が重要な役割を果たしているということもご確認ください。
精読実況中継
Some measures, like the home care allowance Sweden and Norway pay stay-at-home parents who opt out of the day care system, have often only reinforced the stigma attached to housewives: concerns that this allowance, popular with working-class and immigrant families, hampers social mobility by keeping children of poor and foreign backgrounds out of socializing day care have made it controversial.
出典:BENNHOLD,KATRIN. “The Stigma of Being a Housewife.” The New York Times 21 July 2010
まず、私が精読をするにあたって、書きこんだノートをご覧ください。(別窓で開きます。)
精読実況中継.pdf
ノートに出てきている、★数字部分は、自分がキーポイントになると思った点です。以下、具体的にどのようなことを思いついているか、実況したいと思います。(ノートの中身と照らし合わせながらご覧ください)
1. 本来、主語が終わったらすぐに動詞が来るべきところ、コンマがある。
「ん?同格のコンマか??」
2. like +名詞で 「~のように」となるが、名詞の後ろにまた名詞が来ている。
省略された関係詞を見つける。
「お! The boy I met で ’私が会った男の子’と訳すのと一緒。」3. 関係詞。
「関係詞は基本、直前の語を修飾するから、parentsの説明か」
4. コンマ部分終了。やはりこれは同格のコンマ。
「主語の補足説明が終わったということは・・・次あたり・・・?」
来た!述語動詞!!!
5. reinforce の後ろは目的語’the stigma’ で終わるはず。なぜこんなところに過去形、もしくは過去分詞が・・・?
「過去分詞で、直前の名詞を修飾だ!!!」
6. :(コロン)は、後ろに補足説明の文を持ってくる。コロンの後、また新しい文が始まる。
7. 名詞の後ろにthatと来ている。
「I heard the news that the president visited London. あ!この例文に出てくる、同格のthat. ’(that以下)という(thatの前の名詞)’、と訳すやつだ!このthat以下は完全な文になっているぞ」
8. 「あ、また同格のコンマ?」→終わりのコンマを見て、その後ろに動詞が来ていたので、予測正解。
9. hamperは動詞だけれど、thatの中身だから、まだ述語動詞ではないぞ。that節の終わりはどこだ?
10. あ!by + 動名詞。「~することによって」だ。
11. keep ~ out of … : ~を…から遠ざけておく (「こんな言い方もあるんだ・・・」)
やっと動詞来た!!
いかがでしたでしょうか?述語動詞は、コロンの前の文章ではhave reinforced, 後ろの文章ではhave madeでした。
参考に、私の訳を載せておきます。(この訳は、どの語句がどの語句にかかっているかなど文法事項を理解しやすいよう意識して書いた文ですので、日本語としてはかなりぎこちない文になっているかと思います。趣旨をご理解下さい。)
スウェーデンやノルウェイが、一時保育を利用しない専業主婦(主夫)のいる家庭に支払っている在宅保育手当のようないくつかの方策は、しばしば専業主婦に着せられた不名誉をより強固なものにするだけである。
この手当は、労働者階級や移民の家庭によく利用されるものであり、貧しい家庭や移民の子供たちを一時保育などの社会制度の外に置くことにより、社会的流動性を阻害するという懸念が、この手当の存在を議論を呼ぶようなものにしている。(補足:「社会的流動性を阻害する」=貧しい家庭で育った子供は、大人になっても貧しいままである、ということ。スウェーデンでは幼児保育はとても大切なものと考えられている。)
おわりに
いかがでしたでしょうか?
この文章は、自分の主観的な判断だと、英検1級レベルに相当します。(扱われている内容も、英検で扱われそうな社会問題ジャンルです)
私自身、このような文章がいきなり読めるようになったわけではありません。自分の記憶を振り返ってみると、大学入学当時(英検2級)では、雑誌TIMEなどをはじめとする英字記事には全く歯が立ちませんでした。
それ以降、自分のレベルにあった記事(職業柄、大学受験の長文を山ほど読みました)を精読することで、徐々にこのような難しいものを読む力が付いてきました。
皆さんにも、ぜひこの作業を繰り返し、精読の力をつけていただきたいと思います。
8 Comments on 【精読シリーズ・第4回】精読実況中継
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[…] てっきり皆もそうかと思っていたんだけど… なぼむしさんの記事を読んで、私たちの精読は全く違うことに気づいたのでした。 […]
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[…] 精読か多読かと言われると多読式ですが、どうしても意味がよく分からないという箇所はなぼむしさんのやり方とほぼ同じやり方で文章の構造をチェックして意味を把握していました。とにかく短時間で全体の意味を把握することを目標にして学習しました。 […]
たんぽぽ
2010年8月13日 at 1:36 PM (14年 ago)実況中継、たのしみにしていました。
最高です!すごくわかりやすいし、ほんとに学生のころ読んだ「実況中継シリーズ」の参考書のよう。赤ペンの手書き解説をみていたら、精読、すごくしたくなりました。
(今までほとんど精読をしてこなかったので)
これから自分で精読していくにあたり、こちらのサイトを参考にしつつ、あとは自分で文法書などを参考にしながら、なぼむしさんがされたようにSVCなど書き込みつつやっていこうとおもいます。(やり方としてはこれでいいのでしょうか?)
これからもためになる記事を楽しみにしています。いつも利用させていただいてありがとうございます。
nabomushi
2010年8月13日 at 8:55 PM (14年 ago)たんぽぽさんへ
早速お越しいただき、ありがとうございます!
そして、「精読をしたくなった」というお言葉に、ジーンと来ています・・・。
私自身、文の構造がわかるようになったことで、読む力がグンと上がりました。
「スラスラ読める」という目標とは対極にあるような作業ですが、これの繰り返しのおかげで、難解な文でも読めるようになったと自負しています。
>これから自分で精読していくにあたり、こちらのサイトを参考にしつつ、あとは自分で文法書などを参考にしながら、なぼむしさんがされたようにSVCなど書き込みつつやっていこうとおもいます。(やり方としてはこれでいいのでしょうか?)
ぜひお役にたてるように、私にもお手伝いさせてくださいね。
やり方は、たんぽぽさんが書いてくださったとおりで、ばっちりです!
たんぽぽさんにコメントをいただき、こうやってお返事させてもらっている間に、また記事のアイデアがわいてきました。
これからも「ためになった」と言っていただけるような記事を書いていきたいと思います!
どうぞよろしくお願いします。
sshizu
2010年8月14日 at 11:33 AM (14年 ago)解説ありがとうございました!!!!!
この赤ペン入り解説、わかりやすい!
concernsは名詞だったのかぁ。てっきり動詞だと思って、でもsが付いてるから主語は単数→そんな主語は見当たらず→混乱 状態でした(笑)
直前の:以下は同様のことを言ってはいるけれど、ここで一旦切ればよかったんですね。
勉強になります!
こういう文章を数をこなせば分かるようになるのでしょうか?(解説付きの精読本とかで)
それとも文法書もやった方がいいのかなぁ。
私は文法書は持っておらず、リーディングだと日本語訳を見て「こういう構造になってるのかぁ」と理解したらそれで終わりにしています。
なぼむしさんは文法書で勉強した後、こういう英文を精読されて来たんですか?
あ、あと述語動詞を見つけながら読むという点。
これリスニングにも役立ちますね!!!!!
細かいことは気にせず、述語動詞だけ(あと少し主語も気にしつつ)に注目して聴いてみたら、なんだかすっごく意味が取れるようになりました!
と言ってもまだまだクリアには聞き取れないのですが、でも聞き取るポイントが分かるだけで全然違うんだなぁと(いや、本当に)。
今まではどの音も聞き取るぞぉーと意気込む→既に流れた音も気になる→肝心な部分を聞き漏らす→疲労感だけ残る てな感じだったので。
述語動詞だけ聞き取れればいいや、くらいの感じでリスニングした方が意味も取れるし、疲れない(笑)
これからはこの方式でリスニングもしたいと思います。
ただ、難しい文章になるとどれが主語節、述語動詞か素早く判断できないので、そこはリーディングで鍛えるしかないですね。頑張りますっ!
nabomushi
2010年8月14日 at 10:21 PM (14年 ago)sshizuさんへ
こんばんは!
記事を読んでくださってありがとうございます。
楽天ブログのほうでも、この文章をしっかり読みこんでくださって、さらに解説のほうも読んでいただいて・・・本当にうれしかったです!
(さらに、解説分かりやすいと言っていただいて・・・天にも昇る気持ちになっています♪)
私自身、予備校講師だった5年間に、山ほどの文法問題、長文問題に取り組みました。
どちらを先にという形ではなく、並行して両方の力をつけて行きました。
その職に就く前は、文法もいろいろ抜けていたし(用語なんてすっかり忘れていた)、英字新聞なんて太刀打ちできる状態ではなかったです・・・。
長文読解に関しては、問題のついた文章を読む(その質問にその場で答えなければいけませんでした)練習をしたこともおおいに役に立ちました。
またそれについては改めて記事にさせてくださいね!
そして、リスニングに役立つといううれしいお言葉、本当にありがとうございます!
私自身、今sshizuさんのお言葉をきいて、この作業が役に立っていたんだ・・・と目からうろこが落ちています。
この精読の記事を書いて、sshizuさんのように喜んでくださる方がいらっしゃる・・・。本当にうれしいです。ぜひこれからも皆さんのお役に立ちたいと気持ちが高ぶっています!
なんとか実践練習的なことで、皆さんと一緒に精読に取り組むような企画ができないかと、ひそかに胸に秘めております。
またこれからもどうぞよろしくお願いします♪
sshizu
2010年8月15日 at 11:53 PM (14年 ago)文法の勉強は精読と平行で勉強なさってたんですねぇ。
(予備校の講師をなさってたんですねー!!!)
たんぽぽさんが書かれていた通り、精読してみて分からない箇所を文法書で確認又は解説をじっくり読むという形が良さそうですね。
また質問になってしまい申し訳ないのですが、
オススメの文法書などありますか?
やっぱりForestですか?
これからも精読や他の勉強法など、記事を楽しみにしています。
ありがとうございました。
nabomushi
2010年8月16日 at 2:32 PM (14年 ago)sshizuさんへ
こんにちは。ご質問をありがとうございます!
>たんぽぽさんが書かれていた通り、精読してみて分からない箇所を文法書で確認又は解説をじっくり読むという形が良さそうですね。
おっと!肝心のこのご質問について、以前お返事が抜けていました・・・スミマセン。
私もそのやり方が一番いいと思います。
お二人ならば、一から文法書をやりなおすというより、実際に文の中に出てきているものに出会って、穴を埋めていく作業をしていくほうが、絶対いい形で文法を吸収して行けると思います。
お勧めの文法書についてなのですが、私は当時、FORESTとロイヤル英文法を使い分けていました。
FORESTのほうは概念を理解するのによいという意味ではすごくお勧めなのですが、細かい穴を埋めようと思った場合、ちょっと物足りないかもしれません。
(逆にロイヤルだと網羅され過ぎていて調べにくいという短所もあるのですが・・・)
これについては、また私だけでなく、yukoさん、Emikoさんにもお聞きして、改めて記事にさせてくださいね。
sshizuさんのご質問のおかげで、本当にいろいろと書いてみたいアイデアが噴出してきています!本当にありがとうございます♪